やまなしの国保 4月号
23/32

回りが速かったのとあわせ、被災者の脱出、救助を困難にした原因となったと指摘されていた。 札幌市は無届の有料老人ホームに当たる可能性があるとみて調査を開始し、有料老人ホームだと消防法で、誘導灯の設置などの厳しい防火対策が求められているし、自力避難が難しい入所者が一定割合を超えるとスプリンクラー設置の義務があるが、この住宅には各部屋に火災報知器のみがあっただけだった。 半世紀を経た木造住宅。当局の許可を得ていない。不十分な防火体制。これでは不意の火災ではこのような悲惨な結果はあたりまえのことだ。けしからん。このような批判を裏にひそめた報道が続いた。 しかしこの火災とよく似たことが、10年ほど前に起こっていたことを思い出した。2009年3月の群馬県渋川市の静養ホーム『たまゆら』の火災である。 今回の札幌と同じように犠牲者が10人で、その多くが東京都墨田区か関与した路上生活の経験のある生活困窮者、生活保護受給者だった。 ベニヤ板で間仕切りをした狭い個室はスプリンクラーなどの防火設備はなかったし、建築基準法違反が多数あり、この施設の責任者には刑事罰が下された。 しかし、この火事で一番不思議だったのは、なんで群馬県の渋川市に東京都墨田区の関係した生活困窮者が多数住んでいたかだった。現在では地域包括ケアの中心的存在の区役所がどうしてこのようなことをしたのか。 答えは簡単である。墨田区にはこのような生活困窮者を入所させる施設も制度もなかったのである。そのことは今回の札幌の火事にも当てはまる。 焼死者の年齢は48歳から85歳にわたり、身体的介護を必要とする人や不要の人など。現行の法では一括り出来ない人たちだったため、無届けのすんでね。きもちだ。施設にならざるを得ず、届け出ることもできなかったのだ。生活困窮者のために何かしなければという志だけではスプリンクラーなどの高額の費用は到底賄えなかったのだという。 最近、高齢期に入り医療費などの負担に耐えられなくなり、ついに山谷などのドヤにまで身を落とした人たちの話を聞く。多数の焼死者を出した2015年の川崎市の簡易宿泊所や、2017年の山形県横手市の障碍者と高齢者の住宅火災も実は、札幌の『そしあるハイム』へと繋がっている生活困窮者の受難の姿を示しているのかもしれない。 山梨県内の身近な例では、サービス付き高齢者住宅への都内の生活保護受給者の入居がある。すでに、東京都内で面倒を見切れない生活困窮者の関東の隣接県への流入が問題となっている。墨田区が自分の所ではどうすることもできない、路上生活者などの生活困窮者を群馬県の『たまゆら』に送り込んだと同根のことがすでにかなり広範に行われているのだ。 もちろん『貧困ビジネス』といわれるようなものとは一線を画していることは確かだが、これからの少子・高齢・多死社会を前にして、あまりにも対策がないことと、早急な対策の確立の必要性を示したのが、今回の札幌の『そしあるハイム』の火災と多数の焼死者だったことは確かなのだろう。 もしあなたが、札幌市のある道央地方に親しい人があって、その人から親切なことをされて、「ありがとう」とお礼を言った時、「なんもさ、きにすんでね。きもちだ」と、答えが帰ってくるかもしれない。「何でもないですよ、気にしないでください。私の気持ちですから」と、あなたの友人は答えているのだ。 『そしあるハイム』をつくった『なんもさサポート』の人たちも、きっとこの暖かい北海道弁の似合う人たちだったのだろうと、私は何故か、確信しているのである。21

元のページ  ../index.html#23

このブックを見る